世の中の仕組み2

ダメオトコというオトコの子がいました。


とりたてて特別といったワケではありませんでしたが、
彼はとても優しいオトコの子だった。
優しいので、
ダイタイの人に好かれました。


彼はとりあえず幸せでした。
数人の特に親しい人間と、
数十人のそれなりに親しい人間と
仲良く生きていました。



イイヤツというオトコの子がいました。
彼は嫌なヤツだった。
はっきりいえば、最低でした。
優しい人間をみると付け入ろうとしました。
そういう、人間でした。




イイヤツは、
嫌なやつのわりには珍しく
あまり世渡りが上手くなくてとうとう
ある時、他の嫌なヤツラに
狙われることになりました。


世渡りが上手くないので友達はほとんどいません。
その数少ない友達に、ダメオトコがいました。
イイヤツは、
ダメオトコのところに逃げてきて、
かくまってくれないか。
といいました。



ダメオトコは、もちろんさ。
と答えました。


イイヤツが事情を話すとダメオトコはとても哀しんで
「どうしてみんなはそんなに
人を傷付けようとするのだろう。」
といいました。




さらにこうも言いました。
「でも、人を傷付ける人がいるのはしかたがない。
その人だって好きで人を
傷付けるような人間になったわけじゃあないものな。
本当に、そういう人も可哀相なのかもしれないのだから。」




ダメオトコは悩みました。
そしてイイヤツをきっと助けてあげよう
と思いました。
彼を苦しめているのは結局は社会、
つまり僕でもあるのだ、
と。


そして言いました。
「僕の名前と君の名前を交換しよう。
僕がイイヤツで、
君がダメオトコ。
いいね?


そうすれば君は狙われない。
僕が変わりになってあげる。
僕は、人の良い人間だから
人に嫌われたりしないで生きてきた。
でも
君がそうじゃあないからって
君が嫌われるのは
君が好きでそういう人間に生まれてきたわけじゃあない
と思うと、
不条理に思える。


可哀相だと僕はおもう。
僕は君のかわりになりたい。」
そう、言いました。



イイヤツは、これを聞いて、
しめたとおもった。
まったく、そのことに心に
苦しみを覚えることもなかったのでした。


「ありがとう。本当に嬉しいよ」
と彼は言いました。
ダメオトコは、快くそれに答えました。


そして彼には、イイヤツが、
苦しみも、感謝も覚えていないことも、
わかっていたのでした。



こうしてダメオトコはイイヤツになって
イイヤツはダメオトコになった。


そしてイイヤツになったダメオトコは、
嫌なヤツラの手で
ヒドイ目にあいました。


彼らはイイヤツを殴る前に、
こういいました



「お前が人が良いのには同情するが、
お前がイイヤツという名前になった以上
お前をやるしかない。
仕方ないな。
お前が人の良い人間だったから
悪いんだ。」



そして彼らはイイヤツを殴り、
引きずり、
心にまで傷を負わせようとした。
でもだめだった。
心には傷はつかなかった。
せめてそれだけは言わせてくれ。




しかし、彼は最後には殺されてしまいました。
誰もいない場所で、
静かに死んでいきました。







 



 


すこし後に、イイヤツの名前は、
良い人間たちに知られることになりました。
彼らは彼の死を
敬意をもって聞き入れました。
そしてイイヤツという名前を、
人の良い人間
という意味で、敬意を表して
使うようになりました。






しかしダメオトコは、これをみてふたたび
しめた。と思いました。
あれは、もともとおれの名前だ。
イイヤツ。というのはオレの名前じゃないか。
返してもらったって
いいわけだ。


そう、考えました。



そして彼は
彼の名前を返してもらうことにしました。


イイヤツはその後、いろいろなところで、
素晴らしい待遇を受けました。


優しい人たちが、彼を優しい言葉でほめました。
心の底から
誉めました。


そしてイイヤツは、
自分は、それにふさわしい
素晴らしい人間なのではないか
という風に自らも信じこむようになりました。


しかし彼の心は醜いままでした。
彼にであった人間は、彼という人間は
素晴らしい人間であるという思いこみから彼と接しました。
けれども別れるときにはなにか
首をかしげることになるのですが、
それでも、大勢の人が彼のことを褒めちぎるので、
次第に自分もそういう気持ちになり、
かれはやはり素晴らしい人間だったよ
というようになるのでした。









イイヤツは生き残り、ダメオトコは死にました。
そしてそうしたのは社会でした。
物語はここで終わりです。
なぜなら僕はもうこれ以上この話をつづけたくもないからなのです。
ハッピーエンドです。めでたし、めでたし。